はじめて興味を持った画家がいる。トゥールーズ・ロートレックである。19世紀後半のフランスを代表する画家、版画家である。ムーラン・ルージュのポスターとなった彼の作品を見たことがある人は多いのではないだろうか。
フランスの南西にあるアルビという地方の貴族の生まれ、弟を若くして亡くして以来、両親が不仲になり別居。さらには幼い頃に脚を骨折し、脚の成長が止まる。成人後の身長は152センチほどであったという。その病気のせいで父親からは疎まれ、孤独な青年時代を送った。そういう苦境の影響か、パリの娼婦や踊り子の世界に惹かれ、彼の作品にはそれらが題材になっていることが多いが、例外もある。馬である。

彼の伝記映画「赤い風車」で競馬を観ながらロートレックが言った。「馬はわたしの好きな題材の1つだ」
馬には特別な思い入れがあった。それは幼いころ、父と一緒に馬に乗った楽しい思い出があったからだ。現実はもう脚の病気のせいで一生馬には乗れない、父も自分には無関心なまま、それでもなお、馬を描くことが好きだというのだ。

その馬への憧れ(コンプレックス)を素直に絵で表現していることが、かっこいいと思った。自分だったら、憧れを憧れとして受け入れてしまったら、なんだか、それが手に入らない現実がより一層辛く思えて、「馬はわたしの1番嫌いな題材です」と言うだろう。あはは。
自分の本当の気持ちから目を背けて、いろいろ理由をつけては誤魔化してきたそういう自分に、ロートレックの馬は刺さったのである。
自分の気持ちにうそをついたり、抑えたりしていると、どこかで怒りっぽくなったり、嫌味が出たり、本当に行きたい方向とは真逆に進んでしまうことがあるから。ロートレックが馬を描いたように、まっすぐに自分のきもちを抱えて、潔く生きていきたいなァと思った今週でした。
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