Life of T

アメリカ・ボストンでの生活のこと


お料理日記「クリスマスイブ、どうせ覚えていないよ、に励まされて」

「He won’t remember itーどうせ覚えていないよー 」息子が生まれてまもなく、黄疸の検査で踵から採血をしたときにナースから言われた言葉である。(売れない曲名風に書いてみた)ギャン泣きする息子に血まみれの足に、心配になる我々をなだめようとしたのかもしれない。あるいは、採血に不慣れな彼女自身のための言葉だったかもしれない。でもその時、親になりたてで何もかも不安なわたしは、どんなに痛くても覚えてないからいいでしょ、と雑に採血しているような気がして、そんなァ、とネガティブな感情が湧き出たことを覚えている。

同じ言葉でも、状況によって印象は変わる。クリスマスイブ、近所のトレジョーにて、お会計時のスモールトークで「息子にとって初めてのクリスマスなんだけど、ちゃんとしたお祝いをする時間がない」とぽろりと弱音が出た。家族3人の初クリスマスなのに、ちゃんとごはんのメニューを考えたり、プレゼントやコスチュームを用意できなかったことが心に引っかかっていた。そうしたらレジの女性が、「He won’t remember itーどうせ覚えていないよー 」と言った。でも今度は、ポジティブな気持ちになった。(都合がいいだけ)心につかえていたものが、取れた気がした。ごはんくらいはちゃんと作ろうと、前向きになることができた。

おかげで、ピリピリしながらもかろうじて前日に仕込んだ丸鶏と母直伝のフルーツケーキに加えて、クランベリーソースに、なんちゃってオニオンスープまで作ることができた。もしかしたら作れちゃうかもしれない、と計画性なく品数を増やしたので、付け合わせの野菜の焼き加減はいまいちだし(夫の腹時計に間に合わず)、クランベリーソースはソースというかジャムになったし(火を入れて放置しすぎた)、オニオンスープはクルトン入れすぎでスープというかほぼパンになったけれど(大量にあるクルトンを消費したくてね)、でも、ちょっとした特別なイブご飯になった。うまくいかなかったところは、贈り物のワイン(ダックホーンのメルロー2021!)がカバーしてくれた。バタバタな日々でクリスマス気分を味わえないかと思っていたので安心、うれしかった。

Saminさんのバターミルクローストチキンはうまくできた
3年ぶりに作った母のフルーツケーキ

どんな言葉にも二面性がある。どう受け取るかは、その時の自分の心が大きく関わっているように思う。ネガティブに感じるときの多くは、自分側の世界からしか物事を眺められていない。相手側の世界に立つ余裕を持ち、人の言葉に対してフラットに(できるだけポジティブに)向き合いたいとふと思った2024年のクリスマスイブなのであった。来年はどんなクリスマスになるでしょう〜



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